北村龍平

  

My Hometown

久しぶりに、日本に帰っていた。

生活と仕事の拠点の両方をアメリカに移して6年目なので、
日本に行っていた、という方が正しいのかもしれない。

それでもやっぱり、
祖国は日本で、
地元は大阪府吹田市桃山台だ。

幼い頃からいろんなところを転々として、
小学校にもまともに行かず育ち、
高校も中退した俺にとっては、

喧嘩ばかりでロクなことをしていなかったとはいえ、
一応は三年間ちゃんと通った中学時代には、
格別な思い入れがある。

たまたま打ち合わせの場所が大阪、
それも地元のすぐ近くだったこともあり、
久しぶりに大阪にゆっくり滞在できた。


そして、
ついにあの男との再会の時がやってきた。

数ヶ月前ここに書いた男。

喧嘩に明け暮れた中学時代、
熾烈な戦いを繰り広げた宿敵、
花岡伸一という男だ。

その日急に時間が空いた俺は、
親友のレンに連絡して昼飯に誘った。

すると花岡君も仕事を抜けて会いに来てくれると言う。

一時間後、
阪急北千里駅のロータリーで待つ俺。

そこに一台の車がやってきた。

28年という時を経て、
俺達二人は初めて顔を合わせた。

100メートル先から、
お互いが笑顔を浮かべていた。

車が止まり、俺達は固い握手を交わした。

涙をこらえるので必死だった。

こんなことがあるんだろうか。


中学時代に俺達がかわした言葉と言えば、

何やコラ?

おおコラ?

やんのかコラ!!

ぐらいしかなかった(笑)

まともな会話をしたことなど一度もない。

あとは常に睨み合い、殴り合っていた。


それが今、
満面の笑みを浮かべ、肩を叩き合っているのだ。

当時を知るレンが、
これまた大きな笑顔で俺達を見守り、
昔はありえなかった2ショット写真を撮っていた。


俺達は眺めのいい中華料理屋に場所を移し、
28年の空白を埋める昔話に花を咲かせた。

まともに話したことがなかったなんて信じられないほど、
俺達はいきなり意気投合して話し合い、笑い合った。

高校入試の時にも乱闘を巻き起こし、失敗。

暴走族からヤクザへ片足を突っ込みながらも、
見事に更生した彼のストーリーは、
まさに映画か漫画のようで、最高だった。


そうこうしてるうちに、
また別の友人から連絡があり、合流したいと言う。

俺が小学校の卒業一ヶ月前ぐらいに編入してきた時、
最初に友達になった男、デッサンだった。

すると花岡君が言った。

みんなで中学校を見に行ってみよう、と。

よし、南中で合流だ。


15分後、
懐かしい中学校に着いた俺達。

するとデッサンは、校舎の中に入ってこいと言う。

え?いやいや、このご時世、それはマズイだろ。

ガラの悪い男達が4人、中学校に入って行くのは。

だがデッサンは、大丈夫、学校側と話はついてると言う。

何という機転の良さと行動力。


こうして俺達は、28年ぶりに校舎へと足を踏み入れた。

二階の職員室の前へ行くと、そこにデッサンがいた。

プロレスラーのような体格のヤツが、俺をぎゅーっと抱き締めた。

抱き締められたというよりは、
技をかけられた感じだったが、
まあいい、とにもかくにも感動の再会パート2だ。

レンはやっぱり大きな笑顔で俺達の写真を撮っていた。


職員室へ行くと教頭先生が出迎えてくれた。

デッサンの抜群の根回しで、
卒業生であずみ、ゴジラの監督がいると伝わっていた。

そして言い忘れたが花岡君は、
その昔南中がサッカー全国大会で初優勝した時の花形ストライカーだった。

映画監督と初優勝をもたらしたストライカーの凱旋を、
教頭先生は快く受け入れてくれた。


俺達は三年の教室があった四階へ。

そして、
28年前の頂上決戦で俺が敗れた場所へ。

俺達二人はその戦いのことを完全に覚えていた。

その時のお互いの動き、戦いの流れも全部。

俺が血みどろで倒された因縁の渡り廊下。

そこで撮ったのがこの写真だ。

左からレン、俺、デッサン、花岡君。


最高な再会。

最高な仲間。

最高な写真。


28年の時の流れを一瞬で飛び越えて、
俺達は親友になった。

数ヶ月前、
ここで宣言したとうり、
これから長い付き合いになるだろう。


この再会は、
俺にとてつもないエネルギーをくれた。

ここ数年、
誰かを得ること、
誰かと繋がることよりも、
失うことの方が多かった。


特に今年は、
とても苦しい一年だった。

いろいろなことが、
うまく進まず、報われず、壊れた一年だった。

そんな年の最後に、
この思いがけない再会。

時にこんな素敵な奇跡が起こるから、
人生は素晴らしい。

まだまだ引き下がるわけにはいかない。


この再会だけじゃなく、
今回の日本では、
本当に嬉しい再会や出逢いがたくさんあった。

どちらかというと兄貴分キャラのはずなのに、
みんなが俺を、

守ってくれて、
助けてくれて、
ケアしてくれた。

愛するたくさんの人達に支えられて、
俺はどうにかこうにか、
こうして監督として生かされている。

今度は、俺が恩返しをしなければ。

自分に課せられた使命を果たさなければ。

そう固く誓った二週間。


日本のみんな、ありがとう。

またすぐに逢おう。



Nov, 24, 2012